「猛スピードで母は」 長嶋有著
-- 母に恋人らしい男性のいたことはこれまでにもあった。何度か紹介されたこともあるが母はどの男も「恋人」だとはっきりいったことはなかった。名字を「さん」付けで教えてくれるだけだ。慎のことは呼び捨てで相手に紹介した。母を間にして向かい合う男は皆すこし照れているようにみえた。どの男も慎と仲良くしたがった。おもちゃをずいぶんもらった。 二度、三度重ねて会うのはまれで、大抵の男性は一度紹介されるきりだった。朝、テーブルを挟んでパンを食べる慎をみながら「あんたはオートマの車なんか運転する男になるんじゃないよ」とか「すこし高い柵くらい軽々と飛び越えられるようになりなよ」などというので、なにがあったかは分からないが今度の男性もふられたかと思う。 -- とてもとてもいい本だった。 「サイドカーに犬」「猛スピードで母は」の2短編がおさめられていました。 この本は裕福とは言えない子ども時代を過ごしてきた大人には、じーんとくるものがあるのではないか。と思います。 わたしは、貧乏で苦労している親の背中ばっかり見て育ってきたので、まったくもってじじじじーんと来てしまった。といっても苦労話がメインではなくて、子どものクールな目から見た大人への思いとか、生活環境に対する理解とか、なんだかそういうのが「ああ。そうそう」という感じでつくづく共感できるのです。 「ガンプラ?ガンモのテンプラか?」と言うような父がある日突然パックマンの筐体を持って帰ってきて、50円玉を横に積み上げてゲームに熱中する大人たちに対して子どもが、どうせ硬貨は取りだせるのになぜ一枚一枚いれてやらないかと聞くと、この方が臨場感が出るのだと答える。 なんだかとてもしっくりくるなあと思ったら著者と同い年でした。 そして今では大人の気持ちも子どもの気持ちもとても分かるのです。 なんだか懐かしい気持ちになったので、この本は兄に読ませようと思います。
by iam_nanae
| 2005-03-09 18:33
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